第112号 令和5年4月14日発行
一般社団法人山梨県視覚障がい者福祉協会会報
巻頭言 | |
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第57回関東ブロック協議会神奈川県大会に参加 | ・・・・・2 |
分科会報告 | |
生活 | ・・・・・4 |
バリアフリー | ・・・・・5 |
職業 | ・・・・・6 |
女性 | ・・・・・6 |
青年 | ・・・・・7 |
ロービジョン | ・・・・・8 |
行事報告 | |
令和4年度第4回役員会報告 | ・・・・・9 |
今後の予定 | |
定期総会と福祉機器展のお知らせ | ・・・・・11 |
事務局よりお知らせ | |
書き損じはがき等のご寄付を頂きました | ・・・・・11 |
編集後記 | ・・・・・11 |
「山視協だより」は赤い羽根共同募金の配分金により作成されています。
会長 堀口俊二
マスク着用緩和をきっかけに人出が増え、街に活気が戻りつつある年度始めです。わが山視福協でも、今年こそは対面での事業が行えるのではないかと期待されます。その皮切りが4月23日の定期総会です。お互いに顔を合わせながら意見を交わし合い、活発な会運営と生活環境の改善を目指しましょう。また、午後には初めての試みである福祉機器展も予定しています。総会ともども大勢の皆さんのご参加をお待ちしています。
さて、このような中ですが、今月は去る3月4日〜5日にかけて行われた標記大会の報告です。本来ならば、先月号でお伝えすべきところでしたが、日程的に原稿が間に合わず、やや香の抜けた報告になったことをご容赦ください。大会は藤沢市民会館を会場に行われ、本会からは付き添いを含め12名が参加しました。
1日目は、開会式に引き続き基調講演(講師石川准氏による視覚障がい者の自由を広げるIT技術)、分科会(生活、バリアフリー、職業、青年、女性、ロービジョン)、団体長会議(関ブロ委員会を兼ねる)、スポーツ部会議が順次行われ、本会でも参加者で分担しながらすべての会議に出席しました。特筆すべきは、分科会にロービジョンが新たに加わったことです。日視連の取り組みが関東ブロック協議会にも浸透した証であり、今後の活動が大いに期待されます。また、団体長会議では、関東ブロック協議会役員改選が行われ、会長に神奈川県の鈴木孝幸氏、副会長に東京都の橋博行氏が選出されました。
2日目は、大会式典、全体会、閉会式の3部構成で行われました。全体会では、まず日視連竹下会長より以下の事項に関する中央情勢報告がありました。
障害者情報コミュニケーション施策推進法、国連障害者権利条約、障害者差別解消法の現況、同行援護事業における研修時間や報酬単価見直し関連、4月施行の第5次障害者基本計画、代筆・代読事業の実施状況と課題、関東地区で運用が始まる障がい者割引交通系ICカード、有料道路における障がい者割引制度の見直し、視覚障がい者用ハザートマップ普及状況、踏切事故防止に向けた運動の進捗状況、放送関連のバリアフリー化、グループホームに関する最近の動き、あはき施術者も労災保険に加入可能、視覚障がいあはき業者の保険取り扱いの現状、あはき無免許者対策に関する厚労省の動き
多岐にわたる報告でしたが、いつもながら良く整理されたわかりやすい説明には感服させられます。続いて、関ブロ協議会事業報告が承認された後、前日の各分科会報告が行われ、全国大会への提出議題が次のように決定しました。
生活 日常生活用具給付に当たって、同居の家族がいると対象にならない品目を対象品目に
バリアフリー テレビ放送などにおける字幕の音声化・拡大文字化とウェブアクセシビリティーの確保など、情報アクセシビリティーの確保
職業 ヘルスキーパーの公的機関での雇用促進
この後、大会宣言案、決議案が承認され、議事を終えました。
閉会式では、次貴開催団体の千葉県視覚障害者福祉協会小山会長より挨拶があり、来年度は3月3日(日)〜4日(月)に開催予定との日程紹介がありました。3年ぶりの対面方式の開催でしたが、380名が集うという大盛況で、久しぶりに以前の活気が戻ってきた感を受けました。なお、分科会の詳細については、この後の分科会報告をご覧ください。
名取利一
生活分科会は出席者73名、座長は神奈川県、鈴木関東ブロック長を助言者として行われました。
山梨からは「重度心身障害者医療費の窓口払いの無料化の法制化」等に関した要望を、提案議題として提出しました。
他の地区から出された議題には、日常生活用具の給付にあたって同居者の有無により給付されないことについての改善(茨城県)、読書バリアフリー法に伴い視覚障がい者用ポータブルレコーダーの支給制限の廃止(栃木県)、同行援護事業の地域格差の改善(群馬県)、盲導犬同伴者の入店・乗車・宿泊拒否をなくし、盲導犬ユーザーの暮らしやすい共生社会の実現(千葉県)、代筆代読の意思疎通支援事業が地域生活支援事業の必須事業となるよう福祉制度の改善(さいたま市)、視覚障がい者の日常生活用具として、ユニバーサルデザイン製品を対象とするよう、条件の修正を行うこと(神奈川県)、視覚障がい者にも利用可能なハザードマップの作成・提供の要望(横浜市)など、日頃から耳にする事案が議題として提案されました。助言者からは出された議案に対し、現況等の説明があり、活発な意見交換が交わされました。
採決の結果、さいたま市から提案された案と、横浜市から提案された議案の2題が同数となり、話し合いの結果、横浜市から提案された「視覚障がい者が利用可能なハザードマップの作成・提供の要望」が良いのではないかと言う声が多数上がりましたが、会場に横浜市の代表者が出席しておらず、結果、最終的にさいたま市から提案された、「代筆代読の意思疎通支援事業が地域生活支援事業の必須事業となるよう福祉制度の見直しの要望」が全国大会への提案議題として採択されました。
埜村和美
バリアフリー分科会は神奈川県と千葉県を座長に、静岡県立大学国際関係学部教授・石川准氏を助言者として、各団体からの提出議題が審議されました。
議題としては交通のバリアフリー・災害時のバリアフリー・情報のバリアフリーがその主なものでした。交通面では誘導ブロックや音響信号機・エスコートゾーンの連続性の維持と、踏切事故の発生の防止のために、踏切内にもエスコートゾーンの設置の要望が承認されました。歩車分離式信号機の設置においては必ず視覚障がい者の立ち合いが大切であり、設置箇所の情報の提供義務が強く求められ、これも承認されました。また駅構内の安全確保や乗合いバスの音声による行き先案内の徹底についても承認されました。
災害時のバリアフリーにおいては、最近頻発する災害に対して、テレビの字幕スーパーの音声化と拡大文字化が、本県をはじめ他の団体からも要望され、あわせて承認されました。
情報のバリアフリーではスマホ利用者の増加に伴い、視覚障がい者にも操作しやすいアクセシリビティーの開発の促進が要望され、これも承認されました。全国大会への提出議題は1題のため議長預かりとなりましたが、2日目の全体会議においてテレビの緊急時の字幕スーパーの音声化と拡大文字化及びスマホの視覚障がい者に操作しやすいアクセシビリティーの開発の促進が、提出議題として採択されました。
堀口俊二
日視連あはき協議会会長須藤正起氏を助言者に迎え、提出議題10題について協議し、すべて採択されました。内訳は、ヘルスキーパー等雇用促進関連が5題(山梨県からの提案を含む)、重度障がい者就労支援特別事業等就労関連が3題、ICT関連が2題です。
ヘルスキーパーについては、官公庁など公的機関でのハードルが高く、雇用に結びついていない現状が報告され、今後どのような取り組みが有効か議論されました。重度障がい者就労支援特別事業については、まだ実施している自治体がわずかなため、是非地域生活支援事業の必須事業への格上げをという声が強く出されました。
ICT関連では、施術所を訪れる患者のカード等電子決済希望が増えており、視覚障がい者にも使用できる端末の開発をという要望が目を引きました。時代を反映した要望であり、早急な実現をという声が多数ありました。また、職場におけるICTシステムにスクリーンリーダーが追いつかず、苦境に立たされているという事例が紹介され、目まぐるしく進化するICT環境への対応の難しさを改めて感じました。
最後に、最も提案数の多かった「ヘルスキーパー等公的機関での雇用促進」を全国大会の提出議題とすることが決まり、会を閉じました。
小笠原恭子
「視覚障がい女性として気を付けたい防犯法対策とは?」というテーマで各団体から体験や不安なことなどが発表されました。
「外出中、案内を申し出られたとき、慣れた場所で大丈夫と断っても後を付けてこられている気配を感じたが確認できず不安だった。」「急に腕を組まれて誘導されて不快だった。」「道でひったくりにあったが、状況が把握できなかった。」などの体験が発表されました。
「単独歩行で安全を確保するだけでもたいへんなのに他人の気配まで気を配らなければならないのは疲れる。」「警察に通報しても、犯人の背格好や年齢を聞かれて応えられず困った。」などの意見が出されました。
助言者(日視連女性協議会会長の阿部央美氏)からペンダント式のカメラ付きの防犯ブザーを日常生活用具として要望しており、助成を優先して認められるように訴えていきたいと報告されました。
信頼していたヘルパーさんや知人から自宅で盗難にあった事例も複数あり、他人を信頼しすぎてはいけないというようなまとめになって、なんだか寂しい現実を思い知らされる分科会でした。
小林誠
今回の青年部会は、42名の参加で学習会形式で行われました。講師に嶋村幸仁先生(筑波技術大学保健情報システム教授ならびに筑波技術大学就職委員長)を迎え、最近の視覚障がい者の就労状況などお話を聞かせていただきました。
まず、日本における心身障がい者の雇用対象者は377万人おり、その内雇用されて働いているのは61万人と2割にも満たない。これは、アメリカ3割、イギリス5割、スウェーデン6割など欧米とは比べものにならない。次に日本の障がい別の就職率をみると、身体障がい者35%、知的障がい者24%、精神障がい者4.5%になっているとのことです。現在、身体障がい者総数における視覚障がい者の雇用者数は、約1万5千人で視覚障がい者全体の約5%に過ぎないそうです。その理由としては、
まだまだ企業における視覚障がい者に対する理解が進んでいない。
視覚障がい者の企業に対するアピール力が足りない。
就職に関する情報が不十分である。
就職までにアルバイトやインターンシップの経験が少ない。などです。
今後の対策としては、
視覚障がい者も高いパソコンスキルを身につける。
高いコミュニケーション能力を身につける。
職場内のサポート体制の充実を挙げています。
今後の職域として考えられるのは、情報系業務から見てみるとプログラミング、企業のシステム設計、企業のシステム保守・管理、ネットワーク等の専門技術者などを挙げています。
また今後の期待として日本におけるイノベーション開発に健常者とは違った視点から物事をとらえることのできる障がい者が一役を担う日が来るのではないかとも話されていたのが印象的でした。
小田切浩子
関東ブロック大会初のロービジョン分科会でした。参加者38名、提出議案は各団体より1題ずつ合わせて10の議案が提出されました。
内容は、デジタル化が進むなかで弱視者の課題、困り事に関する内容が多く出されました。コンビニやスーパーでセルフレジが急速に進んでおり、視覚障がい者は使えない、使いづらい状況になっています。有人レジを残して欲しいとか、音声対応機能をつけて欲しい、呼び出しボタンをつけて欲しいなどの意見が出ました。又飲食店などでの注文の際、タッチパネルやタブレット端末で行う方式も増えてきたので、これも人的サポートや音声対応、拡大機能をつけて欲しいとの要望が出ました。
他には駅や商業施設に置いて人的支援啓発のアナウンスを求めるもの、スマートサイトを活用して医療から福祉へ繋げる事を確立するよう求めるもの、またマイナ保険証を取り扱っている医療機関において、表示をわかりやすく大きくするよう求めること、日常生活用具の給付条件の拡充を求めるもの、駅において、自動改札口の交通系ICカード専用とか切符対応なのかを分かりやすくするように床にサインをつけることを求めるもの、指定席券売機もタッチパネルになってきているため、これも音声対応機能をつけることを求めるもの、日常生活用具の再利用がスムーズにできるよう求めるもの。以上全て承認されました。
私の感想としては、同行援護利用もQOL向上には大切なこととは思いますが、分科会出席者の多くは私も含めて同行援護等は利用せずひとりで行動してきた方が多く今後も可能な限りちょっとしたサポートを受けながらでもひとりでできることが減らないように願っているようです。同行援護利用と併せてこのような願いも叶う社会で安心して暮らしていけるよう望んでいます。
事務局長 小林誠
3月19日、地域づくり交流センター大会議室をメイン会場にハイブリッド方式で今年度4回目の役員会を行いました。会長のあいさつに続き、事務局から昨年末からの経過報告がありました。
次からは定期総会に向けての議題になります。まず、今年度の事業報告と決算報告について原案通り承認されました。
2つ目の議題の職業部の名称を変更し、活動内容を広げたいとの提案に対し、名称を「就労生活部」と変更して就労をより生活に密着した活動にして行くことが承認されました。
次に来年度の運動方針案について昨年と変更になった点は、2つ、1つは「スマホ社会の中で、視覚障がい者が取り残されることのないよう本会としてもサポートしてゆく」、2つ目は、「やっと念願の障がい者専用のスポーツ施設が実現する見込みとなったので、より具体的な要望をして行きたい」といった部分を運動方針に付け加えた内容で承認されました。
次の第76回全国視覚障害者福祉大会(奈良大会)は、今年も昨年同様オンラインで参加することにしました。各分科会が今年も4月にオンラインで行うことになっていることが大きな理由です。なお、この大会のシンポジウムは、ユーチューブでも見られるそうなので次号にてURLを会員の皆様にもお知らせします。
次の議題の特養ホームの積み立て金の取り扱いについては、長年の懸案でしたが堀口会長と相吉長寿会会長の話し合いの結果、長寿会の総会を開く見込みが立てられないので書面による評決とにしました。2月上旬に郵送した結果、今後の本会の大きな事業である「関東ブロック山梨大会」や「グランドソフトボール山梨大会」また「山視協創立記念事業」に限定して利用させていただくことが報告されました。
次に定期総会の来賓の件では、コロナ以前と同様の方に招待状を出すことが決まりました。
その他では、あはき損害賠償保険の加入資格について毎年の確認が必要ではないかとの意見があり、次年度以降確認してゆくことになりました。
これまでにもお知らせしましたが、4月23日(日)に本会の定期総会を午前10時から行います。できる限り多くの会員の方の参加をお願いします。なお、会場は県立図書館1Fのイベントスペース西面で行いますが会場にお越しの際は、お手元に届いた資料と同封のハガキをご持参いただきますようお願いいたします(書き損じハガキに利用します)。また、午後からは福祉機器展もありますのでこちらも是非ご参加ください。なお、当日はこれまで同様にマスク着用と手指消毒をお願いします
昨年度に引き続き日本キリスト教団山梨分区婦人部の皆様より書き損じハガキ、未使用はがき・切手をたくさん届けて頂きました。ありがとうございました。
2013年に成立した「障害者差別解消法」がまもなく10年を迎えます。この法律に対し、興味深い調査結果が内閣府から発表されていますのでお知らせします。
内閣府は2月21日、「障害者に関する世論調査」結果を発表した。障害者への差別や偏見が「世の中にある」と答えた人は、2017年の前回調査から4.6ポイント増えて88.5%。障がい者への理解が進んでいない現状が改めて浮き彫りとなった。ただ、このうち58.9%は「5年前と比べて差別・偏見が改善された」と回答した。
2013年6月に成立した障害者差別解消法は、障害の有無にかかわらず互いを尊重する「共生社会」実現をうたう。21年5月に成立した改正法は、民間事業者に対し、車いす利用者のために段差にスロープを取り付けるなど障がい者への「合理的配慮」を義務付けた。改正法は24年6月までに施行される。
この法律を知っているかを尋ねたところ、74.6%が「知らない」と回答。共生社会の考え方について「知っている」が48.5%だったのに対し、「言葉だけは聞いたことがある」が31.5%、「知らない」が19.3%で合わせて5割を超えた。内閣府の担当者は「改正法施行に向けて周知を進める」と話している。以上。
いかがでしたか。一般にはまだまだ知られていない「障害者差別解消法」が浮き彫りになったと感じます。私たちも今後これまで以上にこの法律の周知に声を上げていかないといけませんね。
(事務局長 小林誠)
山視協だより 令和5年4月号
発行人 一般社団法人山梨県視覚障がい者福祉協会
〒400−0005 山梨県甲府市北新1−2−12
山梨県福祉プラザ1階
発行責任者 会長 堀口 俊二
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