第135号 令和7年3月14日発行
一般社団法人山梨県視覚障がい者福祉協会会報
巻頭言 | |
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視覚障がい者の人権啓発講演会等の実施状況に関するアンケート調査について | ・・・・・2 |
今後の予定 | |
令和7年度定期総会開催のお知らせ | ・・・・・3 |
体育文化部研修旅行のご案内 | ・・・・・4 |
支部だより | |
都留支部 | ・・・・・6 |
事務局よりお知らせ | |
書き損じはがきや未使用のはがきのご寄付について | ・・・・・6 |
編集後記 | ・・・・・7 |
「山視協だより」は赤い羽根共同募金の配分金により作成されています。
会長 埜村和美
日視連では6年度の事業として、加盟団体支援プロジェクト委員会を立ち上げ、学校や地域に対して視覚障がいの特性やどのような場面で困難を抱えているかを理解してもらうための、人権啓発研修会で使用する資料の作成に着手しました。そのため加盟団体に対し、先ごろ表記アンケート調査を実施しました。これは視覚障がい者を正しく理解してもらうために、県や自治体・学校や企業に対しておこなう、講話等の実態を把握するものです。
結果42.9%の団体が地域の自治体等からの要請により、人権啓発講演会等に講師を派遣していました。また、一部の団体は、この派遣活動に加え、自主的に人権啓発講演会等を開催しています。そして、人権啓発講演会等への講師派遣や開催をおこなった結果、地域において視覚障がい者への理解が生まれ、誘導の支援等がおこなわれるようになった等の具体的な効果が生まれています。また全国の自治体は、人権啓発に関する講演会等に対して、費用助成をおこなう流れが生まれており、この流れを利用している団体も少なくありませんでした。さらにこの流れを活用することにより、地域から当該団体に対する信頼が生まれ、他事業の利用や拡大、会員獲得も期待されます。
しかし約6割の団体は、自治体等から加盟団体宛に人権啓発講演会等に対する講師派遣の依頼がなかったり、依頼があっても講師を派遣していません。この背景には、講師として対応できる者が少なく、個人単位で講師の依頼を受けているのが現状でした。既に講師の養成をおこなっている団体でも、講演内容を均一化することが難しく、講師によって話す内容に差があることを課題としています。さらに多くの加盟団体は、人権啓発講演会等の依頼を受けるためのアピール活動等をスムーズにおこなえていませんでした。そのため地域の自治体等から、円滑に依頼を受ける方法を整理する必要があります。
これらの結果を踏まえ、日視連が人権啓発講演会等に派遣される講師を養成するための、中央研修会を開催し、講師となる人材の確保及び講師の資質向上をおこなう必要があるとしています。また、地域の自治体より費用助成を受けて人権啓発講演会等に講師派遣をおこなう仕組みを作るためには、各地域の加盟団体より地域の自治体等に働きかけることが重要になります。そのため日視連が具体的な好事例等を集約し、加盟団体に情報提供することも必要であるとしています。
本県では旧ボランティアセンターを起点として、障がい者を講師とする「福祉講話」が生まれました。この事業は当時のボランティアセンターの職員であった、故岡尚志氏の「福祉の芽はこどもたちから」の強い志に始まりました。福祉講話の最初の講師は、山視協元会長である故花形幹雄氏が、今は廃校になった甲府市の春日小学校で、こどもたちを前に語りかけました。1979年11月のことです。こどもたちに蒔いた福祉の種は次第に成長し、県内の様々な場所で力強く根を伸ばしています。半世紀にも及ぶこの事業の意義を噛みしめ、これからも大切に守り育てていくことの大切さを思いました。
事務局長 小林誠
令和7年度定期総会を次の通り開催致します。一人でも多くの会員のご出席をお願い致します。
資料は4月上旬に送ります。やむをえず欠席される方は、資料に同封します郵便はがき「書面表決書・委任状」の投函をお願いいたします。「書面表決書・委任状」にはご自身のお名前・ご住所が記載されたシールがはられています。全議案に賛成もしくは会長に全ての議案表決を委任される場合はそのまま投函してください。印鑑は不要です。議案ごとに賛成・反対がある場合や、会長以外の正会員を代理人にされたい方で、はがきの記入が難しい方は、支部長または事務局に電話かメールでご連絡ください。
事務局 電話 055−252−0100
メールアドレス jimukyoku@yamashikyo.sakura.ne.jp
なお、昼食は、本会にて用意いたします。
また、午後から「災害に向かう」と題した講演会を行います。講師は日本盲人福祉委員会の災害支援員の中村透氏です。併せて会員の皆様のご参加よろしくお願いいたします。
部長 角田貴弘
今年は山視恊70周年記念式典の開催の関係で10月、11月の山視協の各支部の行事が続くため6月に研修旅行を行うことになりました。行先は箱根小田原方面となります。また、例年大型バス2台でしたが今年は 1台での開催です。今まで山梨市(旧市役所)・塩山駅南口から乗降だった方は今年度は石和温泉駅北口からの乗降となります。
支部長 相澤幸雄
ご家庭に眠っている書き損じはがきや未使用はがき、切手などがありましたら行事の際お持ち下さい。数は少なくても構いません。定期総会に出席される方はぜひ「書面表決書・委任状」のはがきをお持ち下さい。
障がい者の職域の拡大が望まれるのは、今に始まったことではありませんが最新の情報がありましたのでお知らせします。
厚労省の『2023年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ』によると、2023年度の障害者の就職率は全体で11万756件で、前年度に比べて8219件増加した。
厚労省は法定雇用率の引き上げを見据えて、障害者雇用に取り組む企業が増えたことを増加の要因とする一方、日本視覚障害者団体連合が2019年にまとめた視覚障害者の就職状況の内訳を見ると「あんま・鍼・灸・マッサージ」が39.2%でトップ。販売の職業は1.9%に留まっている。先に挙げた厚労省のまとめでも、宿泊飲食のサービスに従事しているのは身体障害者全体の4.0%しかいない。
視覚障害者が接客する「カフェ」オープン
「新しい働き方の可能性」切り開く
視覚障害者の学生がホールスタッフとして接客するカフェが2月17日、東京・杉並にオープンした。こだわりのドリンクやスイーツが味わえるのはもちろん、視覚障害への理解を深める工夫も凝らされている。
京王井の頭線・富士見ヶ丘駅から歩いて3分の場所に、毎週月曜日限定でオープンした「Moonloop Cafe」。店名には月の満ち欠けのように、晴眼者も視覚障害者も関係なく、さまざまな視野の持ち主が集まれるようにとの願いが込められている。
企画を立ち上げた大学4年の浅見幸佑さんは、自身が代表をつとめる一般社団法人ビーラインドプロジェクトで、視覚障害への理解を深めるイベントなどを開いてきた。同法人でカフェを開業した理由について「視覚障害者と接する中で飲食店で働きたいけど難しいと話す人が多かった。だったら自分たちが接客のできる場所を作ろうと思った」と話す。
接客を担う視覚障害者の学生は2人。大学4年生の隅本真理さんは網膜の病気で生まれつき目が悪く、7歳で全盲になった。「健常者が働くような飲食店で働くことに憧れがあった」と語る。
「食べるのが好きなので、飲食店でバイトをしたかったが、目の障害を理由に断られ続けた。この話を聞いてやるしかないと思った」と話すのは大学1年生の石上匠人さん。彼も生まれつき右目がまったく見えず、左目の視力も0.1以下だ。開店に向けて準備を始めたのは昨年6月。10月からは週に1回店に集まり、調理や接客の練習を繰り返してきた。
●メニューや食器にも視覚障害ならではの工夫
看板メニューはチャイ。店名の由来である月の満ち欠けのように、味は週替わりの「店長」が好きな味に仕上げている。オープン初日の店長は隅本さん。ショウガの風味をより強く感じられるように、シロップの甘さを控えめにした。
さらに口当たりを良くするためスチームして泡立てたミルクを注ぐ。男性客は「クリーミーでふわふわ。味もスパイシーでおいしい」と舌鼓を打った。
看板メニューのチャイを客に運ぶのは隅本さんと石上さんの仕事。目が見えなくても注げるように、注ぎ口がカップに引っ掛けられるような形のポットを用意した。「客とぶつかって物を壊したりすることが決してないように練習してきた」と隅本さんは胸を張る。
チャイに合わせるのは生チョコレート。調理スタッフの上原幹太さんは「フォークで刺して食べられるので、目が見えにくくても食べやすい」と説明。視覚障害のある人でも置いてある場所がわかりやすいように盛り方も立体的にした。
●視覚障害に理解を深めてもらうために
オープン当日。店内には手で場所を確認しながら、机の上に食器を準備する隅本さんの姿があった。「ワクワクしている。いよいよかという感じ」。
視覚障害のある人でも注文しやすいようにメニューは点字のものも備えた。この日訪れた全盲の女性は「誰かと一緒にご飯を食べに行ったときはメニューを読んでもらうことが多いので、自分で確認できるのはうれしい」と喜んだ。
視覚障害への理解を深めてもらおうと店内には点字による五十音や数字の表記が書かれた一覧表や点字を打つための「点字器」も用意。この日は客が点字で打った感想を隅本さんが読み上げた。点字を初めて体験した女性は「伝わるとうれしい。英語が話せるようになったような感動がある」と興奮気味で話した。
オープン初日は15人が来店。そのうち、7人は視覚障害のある人だった。
初日を終えた「店長」の隅本さんは「疲れたけど、すごく心地いい疲れ。達成感がある」と清々しい表情で振り返った。そのうえで、「障害で自分のやりたいことを諦める人はきっとたくさんいる。そのような人たちの背中を押すカフェにしていきたい」と力強く答えた。
訪れるチャンスがあればぜひ立ち寄ってみたい喫茶店ですね。
(事務局長 小林誠)
山視協だより 令和7年3月号
発行人 一般社団法人山梨県視覚障がい者福祉協会
〒400−0005 山梨県甲府市北新1−2−12
山梨県福祉プラザ1階
発行責任者 会長 埜村 和美
編集責任者 事務局長 小林 誠
電話 055−252−0100
FAX 055−251−3344
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